| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-331 (Poster presentation)

巣箱を利用する鳥類における巣材の種類と放射線量の関係

*松井 晋,笠原里恵,上田恵介(立教大・理),三上 修(岩手医科大・共通教育)・渡辺 守(筑波大・生命環境科学)

2011年3月に起こった東京電力福島第一原子力発電所の事故により、多量の放射性物質が陸域では東北および関東地方を中心に拡散した。事故後2年目の2012年の繁殖期に、茨城県と東京都の2地域で、巣箱で営巣するスズメとシジュウカラの巣材の種類と巣箱内の放射線量の関係を調べた。放射線量の測定には、ガイガーカウンターおよびゲルマニウム半導体測定器を用いた。スズメは枯草や枯葉を主な巣材とし、シジュウカラはコケ類を主な巣材として巣箱で営巣する。ガイガーカウンターを用いた測定の結果、茨城県では巣箱内の放射線量はスズメ(n=17)よりシジュウカラ(n=3)の巣材が入っているほうが高かった。一方、東京都では巣箱内の放射線量はスズメ(n=12)とシジュウカラ(n=3)で有意な差は見られなかった。調査を実施した事故後2年目の繁殖期には、スズメが巣材として主に利用する一年生草本の葉や茎の表面に付着する放射性降下物の量は、事故直後の繁殖期よりも減少していたと考えられる。一方、シジュウカラが主に巣材として利用するコケ類は、雨などによって環境中の放射性物質が集積されやすい湿った場所に好んで生育している可能性がある。このため陸域で東京都より多くの放射性物質が降下した茨城県において、コケ類を巣材とするシジュウカラの巣内は、草本類を巣材とするスズメの巣内よりも、放射線量が高くなったと考えられる。発表では、ガイガーカウンターを用いて測定した値と、ゲルマニウム半導体測定器を用いて測定した巣材に含まれる放射性セシウム量の関係についても議論する。本研究はJSTの国際緊急共同研究・調査支援プログラム(J-RAPID)より研究助成をうけて実施した。


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