| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-332 (Poster presentation)
鳥類の生息を目的とした干潟の再生事例では,現場環境や制約条件をふまえ,独自の技術によって再生がすすめられている.しかしながら,統一的な干潟の計画設計技術のガイドラインは,いまだ存在していない.そこで本研究では,小型のシギ・チドリ類が提供する生態系サービスの持続的な享受を目標とした場合のサブ目標を提示した.つぎに,そのサブ目標を具現化するための干潟生態系の再生計画や設計に資する干潟の理想像,すなわちconfiguration(形状,構成,配置)を提案した.
シギ・チドリ類が提供する生態系サービスの多くが,「採餌」によって提供されることから,生態系サービスを最大限に享受することが目標であれば,「採餌量(採餌個体数×捕捉速度)の最大化」が達成されればよいことになる.これまでの研究事例により,小型シギ類がバイオフィルムを餌としていて,その密度が高い泥質干潟ほど,よりバイオフィルムに依存していること,しかし,バイオフィルムのみを専食することなく,少なくとも30%以上は,従来から知られていた底生無脊椎動物などを餌としていること,そして,最適採餌理論をふまえると,サブ目標としては,(1)バイオフィルムと底生無脊椎動物の両方が採餌可能,(2)餌密度の最大化,(3)採餌可能時間の最大化の3つが重要であると考えられた.
サブ目標を具現化するための,干潟の理想的なconfigurationとして,(1)ラグーン型の干潟形状,(2)複雑な汀線形状,(3)緩い干潟底面勾配,(4)潮間帯上部が泥質で潮間帯中下部が砂泥質,(5)最干潮時の最大水深が30 cm 程度以下,(6)淡水の流入,(7)視界を妨げる障害物がない,の7点を提案した.