| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-333 (Poster presentation)
統計モデルによる分布推定は、生物の限られた分布情報に基き、気候等の環境情報を利用してより広い範囲の分布確率を推定する手法である。保護区選択においては、検討対象全域で全種の分布が把握されていることが望ましい。しかし、現実には分布調査は一部の地域でしか行われていないことが多いため、分布推定モデルによる補完がよく行われる。モデル補完は、検討対象地域を広げられるというメリットがある一方で、モデルの推定には不確実性が伴うというデメリットがある。
本研究では、保護区選択において、分布調査が不十分な場合に分布推定モデルによる補完を行うことの有効性を評価することを目的とした。現実のデータでは、真の分布情報が完全には得られないことから、シミュレーションで生成した仮想の生物分布データを用いて評価を行った。
モデル補完の有効性に影響する要因として、1.調査済みで既知の分布情報がある範囲、2.得られる環境情報でどれだけ分布が説明できるか、の2つが考えられる。1については、あまりに調査範囲が狭い場合、精度の高い分布推定モデルを作ることができず、モデルの有効性は低下するだろう。逆に、調査範囲が十分に広ければ、モデルによる補完は必要なくなるので、中程度の調査範囲のときにモデルが有効になると考えられる。2については、一般に生物の分布を完全に説明できるほど詳細な環境情報を得ることはできないので、説明力がどれくらいあればモデルが有効なのかを評価する必要がある。
今回の発表では、これら2つの要因を考慮し、どの程度の範囲が調査されており、どれくらい説明力の高い環境情報が得られていれば、分布推定モデルが有効であるか、検討した結果を報告する。予備的な解析から、生物の分布パターンもモデルの有効性に大きく影響することが明らかになってきたため、その影響の仕組みについても報告する。