| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-336 (Poster presentation)
東日本大震災以降,再生可能エネルギーの一つである風力発電への注目は増している.とりわけ洋上風力発電(洋上風発)は,陸上の風車建設適地の不足や電力供給のさらなる安定化などを背景に,大規模導入への期待が急速に高まっている.洋上風発は,建設や運用に関して多くの経済的利点を有するが,やはり陸上風発と同様,生態系に様々な悪影響を及ぼすことが想定される.そのため,海洋生態系への影響が最小限となるような建設地の選定が必要である.海鳥は洋上風発の影響を受けやすい生物の一つである.洋上の風況が良く洋上風発が今後建設される可能性のある北海道の沿岸には,海鳥繁殖地が点在する.そのため,同地では洋上風発の建設地と繁殖中の海鳥の行動圏が重なる可能性が高い.本研究では,海鳥繁殖地の位置,繁殖個体数,繁殖する海鳥種ごとの採餌範囲,絶滅リスク,行動や生態的な特徴を考慮し,北海道沿岸域において洋上風力発電が繁殖中の海鳥に及ぼす影響を推定し地図化した.繁殖期に洋上で採餌する海鳥の個体数は,繁殖地の多い道北の日本海側,道東の太平洋側,知床半島,および渡島半島沿岸で多いと推定された.中でも,絶滅リスクが高い種や風車と衝突しやすい(体サイズが大きく飛翔速度が速い)種の繁殖地が点在する道北や道東域では,洋上風発が繁殖中の海鳥に与える影響がとくに大きいと推定された.しかし,現状では海鳥の繁殖地や個体数に関する情報が不足している地域も多く,今後さらなる詳細かつ実用的なアボイドマップ作成のためには,海鳥繁殖地に関する最新の情報を収集することが不可欠である.