| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-343 (Poster presentation)

山間部の水田地帯におけるカエル類の産卵場所選好性

金井亮介, *中西康介, 田和康太, 沢田裕一(滋賀県大・環境科学)

カエル類は水田地帯を代表する生物であるが、日本各地で地方版レッドデータブックに記載されるほど個体数を減少させている。その原因の一つに産卵場所である水田地帯の環境悪化が挙げられる。滋賀県高島市の水田地帯では5種のカエル類の産卵が確認されており、特にモリアオガエルRhacophorus arboreus、シュレーゲルアオガエルRhacophorus schlegeliの卵塊が多く見られる。モリアオガエルは通常水面に張り出した樹上に産卵するが、ここではシュレーゲルアオガエルと同じように畔の水田に面した部分に産卵を行っている。しかし、畦塗りにより畦を固めてしまうと、シュレーゲルアオガエル、モリアオガエル両種の産卵が難しくなると考えられる。そこで本研究では2種が産卵場所として好む水田環境、特に畦塗りを行なった水田と行なっていない水田で両種の産卵数に違いがあるのか調査をした。

滋賀県高島市の山間部にある水田地帯で、モリアオガエル、シュレーゲルアオガエルが産卵を行った2012年5月13日から6月29日までの期間、調査を行った。調査地域の中から畦を33箇所、水田に隣接した水路(堀上)の縁を24箇所選んだ。週3回午前中に調査水田・水路に産卵されている2種の卵塊をカウントした。同時に、調査畦において畦塗りの有無を、調査水田、水路の両方において水深と水温を記録した。これらの要因と2種のカエル類の産卵数との関係をGLMMを用いて解析した。

その結果、モリアオガエルでは、水温が高いほど、また水深が深いほど、卵塊数が多いという結果が得られたが、畦塗りの効果は有意ではなかった。ただし、畦塗りを行った畦の方が卵塊数は少ないという傾向はみられた。シュレーゲルアオガエルの卵塊数は、畦塗りを行なっていると減少し、また水温が高いほど多くなるという結果が示された。


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