| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-345 (Poster presentation)
海岸侵食や人的利用等の影響によって、砂浜海岸の適切な管理と保全が求められている中で、それらを評価する生物指標としてスナガニ属のカニ類(Ocypode spp.;以下、スナガニ類)が注目されている。本研究では、ほぼ同じ地域の沿岸域にありながら人為的改変が行われている海岸とそうでない海岸において、スナガニ類の生息場所利用の違いについて調べた。砂の採取や養浜が毎年行われている海岸では、人為的改変の影響が少ない海岸に比べて、巣穴数から推定されたスナガニ類の生息密度が明らかに低い値を示した。さらに、人為的改変が行われている砂浜海岸では、活動期間を通して巣穴開口部のサイズが小さく、巣穴の分布が汀線付近に集中し、人為的改変の影響が少ない海岸よりも先に巣穴の出現時期が終わることが確認された。これらのことから、人為的改変によってスナガニ類の成体が定着できない砂浜環境となっている可能性が考えられ、毎年新しく砂浜に着底する幼体のみが養浜後の海岸に生息していることが推測された。今後は、人為的改変が行われている海岸でスナガニ類の成体が定着できない要因を解明するとともに、海浜動植物の生活史や生息環境にも配慮した海岸保全策を検討していくことが望まれる。