| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-346 (Poster presentation)

ため池の栄養塩推定モデルの開発

*木塚俊和,深澤圭太,石田真也,高村典子(国環研)

富栄養化はため池の生物多様性を低下させる主要因と言われており、生物多様性を保全する上で富栄養化の要因の解明が求められている。何らかの環境情報から水域の栄養塩レベルを推定するモデルは、各地のため池群の栄養塩レベルを広域的に評価するだけでなく、富栄養化のプロセスや要因を理解する上で有効なツールとなる。しかし、既存のモデルは河川や湖沼などがほとんどで、ため池などの小規模でモニタリングデータの乏しい水域を対象としたモデルはほとんど見当たらない。本研究では、1)ため池の全窒素と全リン濃度を推定するモデルを提案すること、2)作成したモデルを用いて富栄養化の要因を明らかにすることを目的とする。兵庫県南部を対象地域とし、池の水源タイプ(集水域のみ、ダム水補給、河川水補給、井戸水補給)と集水域の土地利用(森林、水田、畑地、市街地、ゴルフ場)の各組合せから3か所程度ずつ、計50か所の池を選定した。栄養塩類を含むため池の水質調査を2012年4~10月の毎月1回実施するとともに、モデルの作成に必要な集水域情報(集水域面積、土地利用、水路網など)をGIS上で整備した。栄養塩推定モデルとして、集水域における栄養塩排出モデル(原単位法)と池内部での水質変化モデル(Vollenweiderモデル)を統合したプロセスモデルを作成した。その際、栄養塩の排出負荷原単位とVollenweiderモデルの沈降係数をパラメーターとし、池の全窒素・全リン濃度の実測値に最も合うようにベイズ推定した。プロセスモデルの他に、富栄養化に関わる環境変量を網羅的に探索する統計モデル(一般化線形モデル)も作成した。推定精度、出力情報の有用性、汎用性等の観点からプロセスモデルと統計モデルの利点と難点を整理した。


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