| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-347 (Poster presentation)
近年,生物多様性の回復を図る自然再生において,目標植物種の導入を通した植生復元が盛んになっている。こうした復元には,専ら,埋土種子を含む表土が復元材料として用いられてきた。しかし,草原生植物など埋土種子の形成されにくい種群に対して有効な植生復元手法は開発されていない。そこで,本研究では,草原生植物の主要な生育地である二次草地と,植生管理が継続されている二次林を対象に,結実種子を含む刈り取り残渣という新たな復元材料を用いた植生復元技術の開発を目指している。この発表では,次の2題について報告する。
復元材料に含まれる目標種の種子量は,植生復元の成否を大きく左右する。刈り取り時期は結実種子量に影響を及ぼす主要な要因であり,多種多量の復元目標種の種子が得られる刈り取り時期の解明は,植生復元の際,重要な考慮事項である。そこで,第一の研究として,2箇所のドナーサイトで時期を変えた刈り取り試験を行い,刈り取り残渣から発芽する個体数を計測する。
単位面積に撒き出す刈り取り残渣の量が多いほど,植生復元地での種子密度が高まる半面,増加する残渣の量は種子の発芽を阻害するようになる。種子量とバイオマス量,および両者の比が発芽密度に及ぼす影響を把握すれば,得られた種子が効率よく発芽する残渣撒き出し方法を植生復元に利用できる。そこで,複数の撒き出し方法によって発芽した種子量を比較する。刈り取り残渣の撒き出し方法と発芽種子数との関係を解明し,刈り取り残渣に含まれる種子が高い確率で発芽する撒き出し方法を明らかにする。