| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-353 (Poster presentation)

コウノトリの遺伝解析と個体群管理への適用の可能性

*内藤和明(兵庫県立大・自然研)・西海 功(科博)・大迫義人(兵庫県立大・自然研)

コウノトリの国内の野外繁殖個体群は1971年に一旦絶滅し,2005年から豊岡盆地において再導入が進められている.2007年からは野外で繁殖しており個体数は約60個体に達した.しかし遺伝的リソースが限られているため,飼育下,野外ともに集団の遺伝的多様性の確保が依然として課題である.日本で飼育されているコウノトリの集団の遺伝的多様性については,これまでにミトコンドリアDNAのハプロタイプに着目した研究が行われ,その結果は飼育下でのペア形成の際にも参考にされてきた.一方,核DNAを対象にした解析は未だ十分でない.本研究では,豊岡盆地における飼育集団および野外集団の一部の個体を対象に,マイクロサテライトマーカーを用いて集団の遺伝的多様性を解析し,遺伝子座毎の多型の有無や程度を明らかにし,タイピング結果に基づき個体間の遺伝的距離を試算した.

兵庫県立コウノトリの郷公園で飼育している18個体および豊岡盆地に放鳥された13個体を解析対象個体とした(一部は既に死亡).コウノトリおよび近縁種であるシュバシコウを対象にマーカーが開発されたものと独自に開発したものの計12遺伝子座について,蛍光標識されたプライマーを用いてPCRを行い,ジェネティックアナライザで各遺伝子座の断片長データを得て個体毎にタイピングを行った.解析対象個体の全組合わせについて個体間の遺伝的距離をCodom-Genotypic distanceを用いて算出し,多次元尺度法を用いて視覚化した.その結果,遺伝子座当たりの遺伝子型の数は平均5.08,ヘテロ接合度の期待値は平均0.60であった.ペアになっている個体は互いに比較的離れた位置に配置されること,すなわち遺伝的距離が比較的遠い個体の間でペアが形成されていることが明らかになった.


日本生態学会