| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-355 (Poster presentation)
鉱山の掘削跡地や精錬場が荒廃地となり、植生回復が難しいケースは国内外に多くみられる。その一方、人為の有無を問わず改変された自然が回復した例は少ない。
本調査地である秋田県小坂町では明治時代から銅や鉛、亜鉛、金、銀などの製錬が行われてきた。現在では精度の高いフィルターが設置され、排出されるガスの徹底がなされ、極力低減されている。しかしながら、過去に製錬課程で生成される亜硫酸ガスや鉱滓、廃石、鉱屑などによって形成されるいわゆる捨石堆積により、土壌pHは時に3.5を下回る酸性となり、その土地にあった植生は破壊あるいは劣化され、対応策としてニセアカシアなどによる植林が行われてきた。
しかし、外来種による単一植林ではなく生態に配慮した生態保全を行いたいとの要請をDOWAホールディングス株式会社から受け、2005年から植物社会学的調査を元に生態回復を行ってきた。本発表では、その方法およびこれまでの経過を報告する。
植栽に用いた樹種は当地の潜在自然植生構成種であるミズナラ、コナラ、ハウチワカエデ、オオヤマザクラ、シナノキ、ヤマボウシ、ナナカマドなどの夏緑広葉樹である。種数はこれまでに25種にのぼり、これらの樹種のポット苗を混植した。植栽地は上記の捨石堆積場や鉱滓が積み上げられたカラミ山などの開放地のほか、将来の林層転換を念頭にニセアカシア植林下にも展開され、これまでに10万本を超える樹木が植えられている。
植えられた樹木の生長は、その環境条件によって異なるが、良好なものは樹高3mを超し、根元直径は5cm以上になり、種子を結実する個体も出てきている。生長量と土壌には相関が認められ、盛り土に用いられた土壌が良いほど、生長量が増大した。植栽された基盤、斜面方位、樹種、土壌pHなどと生長量の関係について検討する。