| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-359 (Poster presentation)
モンゴルの南西部に位置するグレートゴビA厳重保全地域は、野生フタコブラクダやゴビグマなどの絶滅危惧哺乳類が生息する保全上重要な極めて重要な地域である。極乾燥地域に位置するため、保全地域内では植生がほとんどない地域が大部分を占めるが、山地や湧水地周辺などに比較的植物が多い地域が点在している。そこで、湧水地ごとの絶滅危惧哺乳類の利用状況と、種子散布に関する植物―動物の対応関係を明らかにすることを目的とした。2009年と2010年の8月下旬から9月上旬にかけて、厳重保全地域内の湧水地8地点(2年連続調査は内6地点)周辺で植生および結実状況調査と、フタコブラクダ、ゴビグマ、アジアノロバ、コウジョウセンガゼルの糞採集をおこなった。また、実験室において、採集した糞からの発芽実験をおこなった。その結果、2年連続で調査した湧水地では、年による動物種ごとの糞の発見状況には変化がなく、フタコブラクダの糞はすべての湧水地で採集できた。しかし、他の3種では糞が発見できない地点があった。2年間の発見状況に違いがなかったことから、動物種による分布やよく使う湧水地が異なっている可能性が示唆された。糞採集時に結実していた植物種は複数存在したが、発芽実験では、Nitraria spp.のみの発芽が5地点で確認された。そのうち、2年間とも発芽が確認されたのは2地点であり、別の2地点では2009年のみ、1地点では2010年のみ発芽が確認された。ただし、2地点のゴビグマ以外からは、発芽数が少なく、アジアノロバからは発芽が全く確認されなかった。以上から、動物種による種子散布者としての貢献度の違いと結実状況の地域差が示唆された。