| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-365 (Poster presentation)
世界的な都市への急激な人口集中は数十年先まで予測されており、多様性保全と開発を両立させた都市計画が求められている。本研究では、近年農地景観において盛んに議論されている「土地の節約・共有」概念を用いることで、都市において人間は野生生物と共存すべきか(共有戦略)、それとも保護区を設定すべきか(節約戦略)、もしくはそれらの折衷案がいいか(ハイブリッド)?という問いに答えることを目的とした。なお、本手法は生物種の個体数と景観内の土地利用強度の関係(関数の形状)を用いて、いずれの戦略の景観がより多種の個体数を維持可能か(最適な土地利用戦略か)明らかにする。
調査は、2012年に東京都全域内の35のグリッド(1×1 km)で行った。各グリッドの土地利用強度指数として、前年の4~9月の植生指数(NDVI)を用いた。調査対象分類群には、蝶類、地表性甲虫類を選定し、それらは森林性種/開放地性種、パッチ依存種/マトリクス適応種(蝶類のみ)への機能群分類を行った。
解析の結果、蝶類の個体数はNDVIの増加に対して凸型(中NDVIで最多個体数)に、甲虫類は凹型(高NDVIで最多個体数)に反応した。分類・機能群別に解析を行った結果、いずれの場合も景観内のNDVIが低い時は節約戦略、高い時は共有戦略が最適な種が多い傾向が見られた。分類群別では、甲虫類の多くは節約戦略が適した種であったのに対して、蝶類は共有戦略が適した種が多かった。機能群別では、開放地性・マトリクス適応種はほとんどが、景観内のNDVIに依存せず共有戦略が適する種が多かった一方、森林性・パッチ依存種は節約戦略が適した種が多かった。本発表では、上記の分類・機能群間での都市化への対照的な反応を踏まえ、都市において包括的な多様性保全を行うために求められる土地利用計画について議論する。