| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-367 (Poster presentation)

絶滅危惧植物の分布と保全区域とのギャップ:レッドリストランクに注目して

*赤坂宗光(農工大),石濱史子,角谷拓(国環研),藤田卓(日本自然保護協会)

保全資源の効率的な利用は、限られた資源で最大限生物多様性を保全するうえで必須である。ある種の分布域が保全・保護区域に含まれているかどうかは、その種の保全の状態の評価の重要な指標であり、新たな保全区を設置する際に含めるべき対象を考える際に良く使われる。特に全く保全区域に含まれていない種は新たな保全区域を設置する際に優先的に含められるべきと考えられている。この保全区域と分布域の重複の有無は、人間の設定した保全区域が、その種の生育地と一致しているかという保全区域のデザインにより第一義的に決定される。しかし、人間の意図は別として、対象の分布域の広さも、潜在的にサンプリング効果によって各種の分布域と保全区域と重複の有無に影響しうる。このことから、保全区域に分布が含まれない種が、そうでない種よりも分布が減少しやすく、絶滅しやすければ、現時点で、分布域が狭く保全区域に含まれない種は、保全区域に含まれにくいことで、分布が狭くなり、さらに保全区域に含まれにくくなる。という悪循環に陥る可能性があり、特に優先的な保全対策が必要かもしれない。

本研究では、全国の第四次レッドリスト掲載維管束植物種を対象とし、1)日本のレッドリスト掲載種はどの程度、保全区域に含まれているのか。2)各種の分布の保全区域との重複の有無は、分布域の広さによって変わるのか。3) 保全区域に含まれない種は分布が減少しやすく、絶滅しやすいのか。をレッドリストランクを考慮しつつ明らかにする。さらに相補性のアプローチを用いて保全優先区域を示した上で、優先的に保全すべき対象の種と区域の選定に向けての考え方について議論する。


日本生態学会