| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-368 (Poster presentation)
東日本大震災の津波は、海岸の生態系に大きな変化をもたらした。甚大な被害を受けた海岸林は、被害状況が詳細に調査されており、再生に向けた取り組みが実施されている。一方、海岸林より海側に成立する海浜植生は、海岸林以上の被害が予想されるが、被害状況は十分に把握されていない。日本の海浜植生は、海岸林造成や海岸侵食により生育地が減少傾向にあり、津波による被害は早急に把握する必要がある。そこで、本研究では、宮城県の津波被災地を事例にして、海浜植生の被害および再生状況を把握することを目的とした。
研究対象地は宮城県の仙台湾の井土浜海岸、石巻湾の野蒜海岸と矢本海岸の合計3箇所とした。各海岸の植生および微地形を把握するために、海から内陸方向に向かって数本の調査測線を設置した。調査測線上に2m×2mのコドラートを連続して設置し、植生調査と水準測量を実施した。また、海浜植物の再生状況を把握するために、コウボウムギの地下部を掘り取り、種子繁殖と栄養繁殖のどちら由来の個体か判別した。栄養繁殖由来の個体は、地下茎の向きや長さを記録し、津波による微地形の変化を推定した。
海浜植生の被害および再生状況は、海岸によって異なることがわかった。野蒜海岸は多数の海浜植物が出現したのに対して、井土浜海岸ではコウボウムギなど一部の海浜植物だけが出現した。コウボウムギの再生状況も海岸や海岸内の立地によって異なっていた。また、被災した海岸林内に海浜植物が侵入・定着しており、海浜植生の生育地が拡大した海岸もあった。発表では各海岸の海浜植生の再生状況を解析し、再生状況が異なる要因を考察する予定である。