| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-370 (Poster presentation)
近年のエネルギー課題を解決する手段として、再生可能エネルギーである風力発電に注目が集まっている。一方で、風力発電が生物多様性に与える影響に関しては様々な議論が行われており、中でも風車と同じ三次元空間を利用する鳥類は風車への衝突といった重大な影響があることが示唆されている。そうした中、2011年に環境影響評価法が改正され、新たに出力10,000 kWを超える風力発電所を建設する際に環境アセスメントが義務付けられることとなった。しかし、国内でのアセスメントの事例は少なく、効果的な手法の確立は遅れている。そこで本研究では、風力発電建設時の適切なアセスメントを行うための適切な調査手法の検討を行うことを目的とした。
2012年4月から茨城県神栖市、千葉県銚子市の風況のよい沿岸地域で調査を行った。風車そばの地点の1ヶ所と風車のない仮想建設地の2ヶ所の計3ヶ所で月に一度、鳥類の調査を行った。風車が鳥類へ与える影響を調べるためには、最終的に風車への衝突確率を求めることが推奨されており、このために鳥類の飛翔した位置と高さの両方の情報を取得することが重要となる。一方で、環境アセスメントの現場では十分な調査努力を割けない場合も多い。そこで、現実的な人員のもと位置と高さのどちらに重点を置くかで2通りの調査を行い比較した。一つ目の手法では、地図に鳥類の飛翔軌跡を描きながら、風車のブレードの高さを通過したかどうかだけ記録した。二つ目の手法では、レーザー距離計を用いて正確な鳥類の飛翔高度を求める一方、風車の周辺を通過したかどうかだけ記録した。
本発表では2つの手法の比較の結果を紹介するとともに、年間の調査回数や一回当たりの調査時間を変動させた場合に結果にどのような変化が生じるかといった、最適な調査努力量に関する考察も併せて行う。