| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-372 (Poster presentation)
感染症の管理体制を決定する上で、空間的なリスクを評価することは重要な課題のひとつとされており、感染がまだ確認されていない潜在的な地域を示すリスクマップは管理の重点地域を指定する上で有効なツールとして利用されている。感染症の中でも鳥インフルエンザの世界的な流行は、家禽生産の大きな脅威となっている。鳥インフルエンザウイルスの自然宿主は主にガンカモ類などの水鳥類とされており、日本に飛来する渡り鳥の中ではシベリア繁殖するカモ類がウイルスを保有していることが明らかになっている。これまでに、演者らは渡り鳥のカモ類の分布に着目し日本に侵入する鳥インフルエンザのリスクマップを作成してきた。一方、鳥インフルエンザの中でも特に病原性が高い高病原性鳥インフルエンザが、日本では2004年1月に山口県の養鶏場で確認されて以降、断続的に小規模な発生が各地で報告されている。そして2010年から2011年の冬期には全国で野鳥の死骸および糞から高病原性鳥インフルエンザウイルスが確認された。高病原性鳥インフルエンザにより死亡した野鳥の中には絶滅危惧鳥類も含まれており、鳥インフルエンザの流行により野生鳥類の絶滅が加速する恐れが指摘されている。
本研究では、鳥インフルエンザの侵入リスクと絶滅危惧鳥類各種の生息適地を重ね合わせて空間的な感染リスクを評価し、絶滅危惧鳥類の優先的保全地域を明示することを目的とする。まず絶滅危惧鳥類6種(クマタカ、オオタカ、ハヤブサ、タンチョウ、ナベヅル、ヤンバルクイナ)の生息適地指数を在地点情報と環境要素を用いて推定する。先行研究の鳥インフルエンザリスクマップと重ね合わせ、絶滅危惧鳥類における保全対策の必要な優先地域を明らかにする。