| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-375 (Poster presentation)
年数回の草刈りや火入れによって維持される半自然草原は,草原生生物のハビタットとして重要である.しかし近年,半自然草原の多くで植生管理が行われなくなり,遷移が進行することによって草原が衰退している.一方,公園緑地や圃場整備後の畦畔などの造成斜面の中には,今後も草刈りが持続しそうな立地がある.しかし,これらの立地ではもともと在来の草原生植物が乏しく,外来種が優占していることが多い.こうした状況下で草原生植物を保全する方法として,管理が持続しそうな造成斜面に半自然草原を創出することが考えられる.本研究では,外来種で緑化された造成斜面で半自然草原の創出を試みた.
試験地は,兵庫県立淡路景観園芸学校内の造成斜面とした.この斜面は1990年代に造成され外来牧草類で緑化されている.春にはネズミムギが優占し,夏から秋はセイタカアワダチソウが優占する.また,学校管理者によって6月および10月に草刈りが行われている.
2009年5月,この斜面に「A区(外来種駆除+在来種導入区)」「B区(外来種駆除区)」「C区(対照区)」の3つの試験区を設けて実験を開始した.A区では外来種の抑制(5月・10月)に加えて,近隣の畦畔で採取した草原生植物の種子を播いた(6月・11月).B区では外来種の抑制のみをおこなった.C区では特に何もしなかった.いずれの区でも,学校管理者による草刈りは従来どおり実施した.年間の作業時間は調査時間も含めて12時間のみとし,2012年度も継続中である.
実験の結果,ネズミムギは結実前の刈り取りによって翌年以降の密度を大幅に低下させられることが分かった.A区では多くの草原生植物の定着が認められたが,B区ではこれらの侵入が見られず,種子散布のプロセスを人為的に手助けすることで草原創出が可能となることが示唆された.