| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-381 (Poster presentation)
汽水域は生産力が高く,また特有の生物が生息している重要な水域である.しかしながら,近年の人為的環境改変は,汽水域の機能や生物多様性に負の影響を与え続けている.汽水域生態系の保全・再生・管理のためには,それぞれ場所の潜在的な環境や生物相の特性を知り,生態系の健全性を評価する手法が必要となる.
本研究では,環境指標として,汽水域に適応放散した魚類であるハゼ類に着目した.対象地である瀬戸内海周辺海域は,大小さまざまな多くの河川が流入し,多くのレッドリスト掲載種が生息している保全上重要な水域である.本研究では,それらのうち10種(キセルハゼ,クボハゼ,チワラスボ,タビラクチ,エドハゼ,チクゼンハゼ,マサゴハゼ,トビハゼ,ヒモハゼ,イドミミズハゼ)の水系単位での分布パターンを基に河川を類型化し,それぞれのグループに属する河川の流域特性を明らかにすることを試みた.
分布調査は,瀬戸内海周辺海域に流入する220水系の河口域において行った.また,採集調査をおこなった河川における各魚種の文献記録の集積もあわせて行った.流域の特性を表す環境要因として,流域全体および流域内の低地の面積と平均傾斜,河口流出点から一定距離内の平均海底傾斜と平均水深,河口流出点の湾面積を算出した.
分布調査の結果,220河川中154河川において1種以上が確認された.上記10種のハビタットタイプを泥質干潟,泥質塩性湿地,砂質干潟,礫質の4タイプに区分し,それぞれのタイプに属する種の在/不在をもとに,154河川を類型化した結果,9グループに区分することができた.それらのグループのうち,前述の4つのハビタットが全て存在するグループには17河川が含まれ,それらの河川は,集水域面積がある程度大きく,遠浅な海域に流入し,集水域に占める低地の割合が大きくない,などの特徴を持っていることが明らかになった.