| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-382 (Poster presentation)

郷土種による長大法面再樹林化の手法と評価 -富士山静岡空港における法面緑化の試み-

山田辰美(富士常大・社会環境),*関川文俊(富士常大環防研),杉野孝雄(NPO静岡自然博ネット)

近年、在来種による法面緑化が多く行われるようになったが、在来種の名でアジア大陸産のハギ類、コマツナギ類が使用され、日本在来の植物との間の遺伝子汚染が懸念されるようになった。富士山静岡空港では新たに出現した長大法面の緑化手法として、失われた植生を復元するために郷土種による再樹林化が試みられた。ここでいう郷土種とは、「ある地域の現存植生および潜在自然植生を構成する植物」と定義され、他地域の同種の植物は郷土種ではない。空港建設にあたっては、採取不可能な場合を除き、空港周辺(近隣市町村を含む)で採取した種子(郷土種)からポット苗を生産した。独自にプラントを設置し、72種3万本以上のポット苗を植栽に使用した。

富士山静岡空港盛土法面の緑化の基本的な考え方は、「自然林の植生遷移の原理を応用し、在来緑化方法(先駆樹種導入、初期浸食防止)で補助することにより早期に植生を回復させ、多様な生態系の保全を図る」である。具体的には、潜在自然植生を考慮し、将来中心となるシイ・カシなどの常緑樹を主体とし、初期浸食防止等の目的でアカメガシワなどの先駆樹種や落葉樹を混植した。

法面に方形区を設置し、植栽樹木の生育状況や下層植生の消長についてモニタリングを実施した。また、順応的管理として、下草刈りやつる切り、除伐などの管理を実施した。

今回、法面に植栽した樹木の生育状況等を10年間モニタリングした結果をもとに、郷土種による法面の再樹林化の手法について評価を行った。


日本生態学会