| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-385 (Poster presentation)
「生態学」はもはや理系大学・学部だけの科目ではない。環境問題との関わりで、生態系機能の重要性が認知されるようになってきた昨今では、文系大学・学部でも一般教養科目として生態学を扱うことのできる授業科目が開講されている。しかもそのような文系大学・学部は決して少なくない。全国の小中規模文系大学・学部(在学生数5000人未満)のうち講義概要をWeb上で公開している223校を対象として調査した結果、173校で環境学系科目が開講されていたからである(2012年10月現在)。つまり、文系大学・学部でも約78%の大学で生態学とかかわりの深い環境学系科目が配置されているということになる。
では、一般教養科目としての生態学は誰が教えているのだろうか。先述の環境学系科目の場合、関西地域の66校を対象として、科目担当教員の専門分野を調査した結果、生態学を専門としている教員は19人であった。次に多かったのは環境教育(9人)で、このほかに、工学、環境政策学、分子生物学、環境社会学、地球惑星科学、理論物理学、哲学など教員の専門分野は多岐にわたっていた。つまり、環境学を担当している教員のすべてが生態学に精通しているわけではないこと、どれも環境学に関連のある分野ではあるが、環境学のごく一部をカバーしているに過ぎないことがわかる。このような状況の中、大学の一般教養科目の中でどのように生態学が扱われているかが気になるところである。
そこで、演者は先述の173校で開講されている環境学系科目を対象として、15回の授業で扱われている生態学的内容を洗い出す調査を行った。今後、生態学のどのテーマが最も教えられているのか、逆に重要でありながら教えられていないテーマは何なのか、など分析していく予定である。分析結果をもとに、一般教養科目で生態学を扱う上で、必要な支援を考えたい。