| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-386 (Poster presentation)

市民協働調査に基づく環境教育教材としてのアリ類の有効性の検討

*岩西哲(十日町市立里山科学館キョロロ),高田兼太(大阪市西淀川区)

生物多様性の危機が深刻化する今日、あらゆる世代の生物多様性への理解を深めることが必要とされている。アリ類は現存量が多く、他の動植物と様々な関係を持つこと、食性や営巣場所などが多様で、地球上の幅広い環境に分布し、かつ植生や土壌などの環境条件に種組成が敏感に反応することなどから、優れた環境指標動物であることが知られている。これらの特徴に加え、多くの人にとって馴染み深く、採集が容易な昆虫であることから、身近な環境の生物多様性や生物と環境との結び付きについての理解を深めるための学校・一般向けの環境教育教材として大きな可能性を秘めていると考えられる。そこで、アリ類を教材とした環境教育プログラムの開発を目的として、里山科学館キョロロが主催する市民恊働のアリ相調査を実施し、年齢を問わず参加できる採集調査方法の考案や参加者へのアンケート調査などを行い、学校・一般向けの環境教育教材としてのアリ類の有効性を検討した。

まず、新潟県十日町市内の公園や神社等の緑地27地点において、低年齢の子ども達にも行える簡便な見つけ捕り法によるアリ相調査を行った。この結果、4亜科20属39種のアリが採集され、緑地あたりの採集種数は10.0種類だった。また、NMDS法により採集されたアリの種構成に基づいてこれら27地点を序列化したところ、アリの種構成が各緑地の景観や周辺環境と関連していることが示された。

また、市民恊働調査の参加者に対するアンケートを行い、調査に参加しての感想を聞いたところ、年齢や性別を問わず、大部分の参加者が活動を楽しめていたことや、活動を通して身近な環境における生物多様性を実感できたことが窺えた。

これらの結果から、アリ相調査が、幅広い世代に身近な環境の生物多様性や環境と生物との結びつきを実感させる上で有効な環境教育プログラムとなりうることが示唆された。


日本生態学会