| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-387 (Poster presentation)

バスよりハスを捕りたい -琵琶湖の汀線踏査の結果から

今村彰生*,大阪市立自然史博物館

琵琶湖は総延長230kmにおよぶ汀線をもち、118の一級河川が琵琶湖に直接流入している。中小の水路も含めると流入水路は合計で400あるとも450あるともされるが、護岸の形状や水量などの諸条件はさまざまであり、魚類などの分布状況との関連については不明の点も多い。

そこで本研究では、汀線を徒歩によって踏査し、流入水路と琵琶湖との合流点の悉皆調査に取り組んだ。魚類の調査を目視と釣りによっておこない、水路の護岸、河畔林の有無、ヨシ帯の有無といった複数のパラメータと分布する魚類の組成との間の関係を明らかにすることを目指した。

調査は琵琶湖の南西部を中心におこない、2011年からの約2年間で、汀線の約50kmを踏査し、約160の水路(一級河川50を含む)についてデータを収集した。

その結果、琵琶湖南部では外来魚(オオクチバス、ブルーギル)が卓越し在来魚の検出頻度が低かったが、同時にハスの稚魚の群れが南部も含めて広範囲に見られた。その一方で、ハスの成魚やそれらの河川への遡上は、「北湖」では豊富に見られたものの南部では見ることができず、ナマズの検出頻度も南部では低かった。

このほか、合流点付近での断流(表流水がみられない)水路や涸れ水路が多数認められ、魚類の生息場所としての機能が失われていた。断流は一級河川にも見られ、同時に水路の水位が恒常的に低いことも判明した。これらには、集水域の環境変化や現在の琵琶湖での水位操作による汀線の後退などが影響していると考えられるが、この断流によって魚類などの潜在的ハビタットが著しく縮小している可能性もあり、汀線周辺の地形図のミクロスケールでの再検討が必要であることが示唆された。

これら一連の結果について、来聴者と議論したい。


日本生態学会