| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-472 (Poster presentation)

気候モデルの時空間解像度の違いが中部山岳域の森林生態系の炭素収支推定にもたらす影響

*栗林正俊(岐阜大・流域圏セ),魯南賑(岐阜大・流域圏セ),斎藤琢(岐阜大・流域圏セ),伊藤昭彦(国環研),村岡裕由(岐阜大・流域圏セ)

複雑な地形と気候条件を有する中部山岳域の生態系は、温暖化に伴う気候変化に対して脆弱であることが指摘されている。この地域における森林生態系の機能評価やその気候変化応答について、冷帯落葉広葉樹林を有する岐阜大学高山試験地(TKY)を拠点とした野外実験が継続して行われている。一方、広域評価や将来予測、感度解析を行う上で、陸域生態系モデルは有効な手法である。近年のモデル研究では、TKYにおける2000年代の総一次生産量(GPP)は約13 Mg C ha-1 y-1で、2040年代にはGPPが6-9 Mg C ha-1 y-1増加すると報告されている (Ito, 2008; Ito, 2010)。しかしながら、陸域生態系モデルの入力値として用いられている気象データは、時空間分解能が粗いため複雑地形を有する中部山岳域の気候を十分に表現できない。そこで、本研究では地域気候モデル(WRF: Weather Research and Forecasting)を用いて、中部山岳域における高分解能(1.1 km, 30分間隔)の気象データを作成し、これを陸域生態系モデル(VISIT: Vegetation Integrated Simulator for Trace gases)に入力して、より高精度に中部山岳域の森林生態系の炭素収支を推定した。この結果、WRFにより計算されたTKYにおける気温や土壌温度は、先行研究で用いられた値に比べて低くなった。これは、乗鞍岳中腹に位置するTKYにおいては、モデルの水平分解能を高めたことで標高がより正確に表現されたためと考えられる。この気温や土壌温度の低下に伴い、先行研究に比べてGPPは展葉期と落葉期を中心に低下し、生態系呼吸も年間通じて低下した。


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