| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-486 (Poster presentation)

Estimating fine root dynamics with rates of thickness-dependent root mortality, decomposition, and thickening

Osawa, A. (Kyoto Univ.)

細根動態の定量的な推定のため、連続土壌コアや細根イングロースコアを用いて採取した細根質量データに対して「決定マトリックス(decision matrix)」を適用し、細根の生産量、枯死量、分解量を計算する方法が過去約30年間広く用いられてきたが、この方法は「期間内の成長・枯死・分解のいずれかがゼロ」という条件を内包していた。同時に起こっている細根の成長・枯死・分解を捕らえることは困難で、また必ず過小評価となるため汎用には適さない。最近、これに代わる方法として、土壌コアによる細根データと枯死細根の野外分解実験に基づいて、細根動態の諸量を計算する現実的で筋の通った推定法が提案され(Osawa & Aizawa 2012)、期初と期末の生きた細根現存量、枯死細根現存量、およびこの期間の枯死細根分解率がわかれば、この期間の成長・枯死・分解量がすべて解析的に計算可能であることが示された。しかし、この方法は細根を単純に直径2 mm以下の根と定義していた。実際は非常に細い微細根と普通の細根では枯死・分解・生産に差がある可能性がある。細根と微細根が異なる枯死率と分解率を持つ場合、一定期間の根の枯死・分解・生産量はどのように計算すればよいだろうか。上の議論を発展させると、細根と微細根の分解量と枯死量は根の太さ階級を考慮しない場合に類似した式を用いて推定できることが明らかになる。ただし、太さ階級を考慮したことにより、根の生産量を推定するためには、根が太ることによる階級間の質量移動を考慮する必要がおこってくる。現実的にどのように測定をおこなったら良いか、また、計算が可能か、これらの方法を提示する。


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