| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-488 (Poster presentation)

石垣島マングローブ沿岸域における流動特性と海草分布

*寺田一美(東海大・工),中田正人(YSIナノテック(株)),杉山太宏,梶田佳孝(東海大・工)

熱帯・亜熱帯沿岸域には、マングローブ-海草藻場-サンゴ礁から成る複合的な生態系が形成され、それらは物質循環、生物多様性の維持等で互いに関連し合うと考えられるが、その根幹を支える生態系間の流動特性・メカニズムについては、いまだ十分な見識が得られていない。本研究ではマングローブ河口から海草藻場までの流動特性ならびに物質輸送を検証すべく、沖縄県石垣島吹通川沿岸域において流速・海底地形測定、海草分布調査および採水、土砂・栄養塩分析を行った。吹通川にはヤエヤマヒルギ、オヒルギ等から成るマングローブ林が存在し、外海との接点である吹通橋より沖合には海草藻場、サンゴ礁が形成されており、複合生態系の物質交換を検証するには絶好の河川といえる。現地調査は2011年8月、2012年8月の大潮期に行い、流速測定には超音波ドップラー流向流速計River Surveyor M9、SonTek IQ(SonTek社製)を用いた。

沿岸域の海底地形ならびに流速測定結果より、吹通川沿岸域には強い澪筋が形成されており、下げ潮時にその澪筋に沿って発生する河川フラッシュによって、土砂・栄養塩が沿岸域の海草藻場地点まで流出していることが明らかになった。すなわち海草藻場がマングローブ河口起源の土砂・栄養塩を利用可能であることが示唆された。さらに、SonTek IQによる超音波後方散乱強度を用いて、潮位変動に伴う濁度の時系列変化を検証したところ、マングローブ河口の濁度は下げ潮時に底層で急増することが明らかになった。すなわちマングローブ起源の有機物・栄養塩は下げ潮時に増加し、それがさらに沿岸域に形成された澪筋流によって海草藻場まで流出することが示唆された。


日本生態学会