| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


シンポジウム S01-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

湖沼・海洋に潜む多様な菌類の検出と機能の定量化:データベースの再構築と定量方法の開発

鏡味麻衣子(東邦大・理)

陸上と異なり、水界生態系の食物網や物質循環では菌類は無視されてきた。近年、分子生物学的手法を用いた解析により、湖沼や海洋において多様な菌類の存在しうる可能性が明らかになりつつある。また、ツボカビを介した物質流(Mycoloop)を含め、菌類が水界の物質循環において担う機能の重要性も見えてきた。しかし、野外において菌類の生物量と機能を評価する万能な方法は存在しておらず、未だ定量化は困難を極める。特に、種名と対応したDNAデータの登録数が圧倒的に少ないため、次世代シークエンサーを用いてDNA解析を行ったとしても、環境中から得られたDNA情報だけでは、どのような機能をもつ種がどれだけいるのか把握しきれないだろう。

菌類は、ウィルスやバクテリアに比べ大きいため、微生物のなかでは観察は比較的容易である。培養も不可能ではない。そこで、私は、培養・観察といった古典的手法とDNA解析の併用により、種名とDNA情報の合致したデータベースを再構築し、機能の評価も含めた多様性解析を行いたいと考えている。データベース構築に際しては、顕微鏡で観察できるような種はSingle-Cell PCR法を適用し、観察が困難な種については様々な釣菌法・培養法により検出することから始めたい。ある程度データベースができれば、次世代シークエンサーを用いて解析した場合にも、検出された菌類の分類群と機能(分解・寄生・共生など)を把握した形で多様性を評価できると考えている。また、菌類の生物量や機能の定量化については、FISH法、定量PCR法にくわえて、抗体(モノクローナル抗体)用いた手法の適用を試みている。本講演では、最先端の分子生物学的手法と共に、観察・培養といった古典的手法を併用することで、野外では困難を極める微生物の機能の定量化がどの程度可能になるのか、議論したい。


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