| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


シンポジウム S01-5 (Lecture in Symposium/Workshop)

土壌共生菌がつくりだす 森林の多様性: 大規模移入操作実験と最先端分子同定技術の融合

門脇浩明(京大・地球環境)

同じ餌や生息場所を利用する植物の種と種の間では、競争が起こる。理論的には、競争能力に差があれば、かならず強い種が弱い種を絶滅させる。しかし、森林における植物の多様性は、そうした弱者切り捨ての原理だけでは説明できないほど多様であり、安定である。近年、このパラドクスを解決する新しい仮説として、地下に棲んで植物の根と共生する菌根菌が植物群集の共存に貢献している可能性が指摘されている。すなわち、地下の菌根菌が織りなすネットワーク(common mycelial network)が異なる植物個体の根どうしを地下菌糸で物理的につなぐことで、植物間の競争を緩和する。こうした競争関係(負の効果)と共生関係(正の効果)の調和こそが緑豊かな森林を形作っているのかもしれない。現在、発表者らは、この「菌根共生仮説」を検証するため、大規模野外移入操作実験と最先端分子同定技術を融合させるアプローチによって、生態系をまるごと土からつくって菌根ネットワークを実験的に再現・解析している。外生菌根性樹種とアーバスキュラ−菌根性樹種の2つの菌根タイプを材料として、菌根菌に感染した苗木とまだ感染していない実生を順序立てて移植する実験デザインによって、菌根菌のマッチング効果が実生の成長率に与える影響を解析する。適切な菌根菌が苗木から実生へ感染することで、実生の成長率は飛躍的に向上することが予想される。今後はこの成果によって、菌根ネットワークを含めた厳密な格子モデルに基づいて森林の遷移確率を計算でき、未来の森林の姿を描くことができるだろう。今回は予報である。


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