| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


シンポジウム S02-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

再生可能エネルギーの急速な発展と保全の課題: スペイン・ナバラ自治州の場合

安渓遊地(山口県大・国際文化)

山口県と姉妹自治体のスペイン・ナバラ自治州は、1992年のリオデジャネイロ会議のあと、再生可能エネルギーの導入に取り組んだ。1994年の州都パンプローナ周辺の山地を手始めに2005年までに33か所に約2000基の風車を建て、2002年に畑のワラを燃やすバイオマス火力発電所が稼働、2007年には太陽光を集め、溶融塩を利用して日に15時間の発電をおこなう装置が稼働している。現在は、原発・石炭石油火力・大型ダムに依存せずに、再生可能エネルギーの電力に占める割合は80%とEUのトップランクにあり、エネルギー自給自治体をめざしている。一方、政府主導で拙速に導入した結果、鳥類の衝突死もまた多発し、2000年3月からの1年間で、猛禽類472羽、シロエリハゲワシGyps fulvus 443羽、その他の鳥類7185羽、コウモリ類749匹の死亡が確認された(日刊紙 Diario de Noticias 8/5/2002)。これらの経験を日本に引きつけて考えるなら、自治体単位での取り組みの大切さ、学会や自然保護団体との協働によるゾーニングの必要性が指摘できよう。

コメントと全体討論

これらの4本の発表に引き続き、飯田哲也氏(NPO環境エネルギー政策研究所所長)を迎えてコメント「エネルギーの地域分散化・分権化をめぐる世界の趨勢と日本の現状」をお願いし、2013年1月の「世界自然エネルギー国際会議」(アブダビ)や2月の「第2回世界コミュニティパワー国際会議」(山口県宇部市) の成果についても紹介していただく。フロアをまじえた総合討論では、1)生態学的な事実関係の確認をふまえて、2)福島原発震災の生態学的・社会的位置づけを共有し、3)今後のエネルギー政策のあり方およびアジア・アフリカへの原発輸出計画などについても視野に入れつつ、生態学会および研究者の社会的役割についての認識を深めたい。


日本生態学会