| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


シンポジウム S04-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

森林の垂直構造(LAD)の 計測と解析

細井文樹(東大)

植物のもつ3次元構造は光合成などの機能と密接に関わっており、その生命活動の維持においてきわめて重要な役割を果たしている。植物の3次元構造を表す指標として、しばしばその垂直構造を表す指標である高さ毎の葉面積密度(LAD:Leaf Area Density)が用いられる。このLADの垂直分布を得るため、我々はスキャニングライダーを用いたVCP(Voxel-based Canopy Profiling)法を開発した。この方法は、対象を取り囲む測定位置の設定、 レーザービーム入射角の最適化、得られた点群データのボクセル化とレーザービームの葉に対する接触頻度の計算、非同化器官及び葉傾斜角の補正というプロセスによって、LADの垂直分布を算出するものである。本方法は最初に孤立木に適用され、平均絶対誤差率17.4%という正確なLADプロファイルが得られた。次に本方法は広葉樹群落に適用され、そのLAD精度が設置したコドラート毎に異なり、レーザービームが十分に到達しているコドラートでは高い精度のLADプロファイルが得られた。またレーザー入射角度によっても精度に違いがみられた。さらに本方法は広葉樹群落の季節毎のLADプロファイル測定にも活用され、本方法により、広葉樹群落の季節毎に異なる特徴的なLADプロファイルを得ることが可能であることが示された。広葉樹群落のLAD算出で明らかになった誤差要因に基づき、LADの誤差を見積もる指標として、ライダーのレーザービーム照射に関する設定と、対象木の構造パラメータとを関連させたLaser beam coverage index Ωを考案し、Ωによって広葉樹群落のLAD推定誤差を見積もることが可能であることが示された。また計測条件が互いに異なる可搬型及び航空機搭載型ライダーにおいても、共通に本指標が適用可能であることが示され、本指標Ωが一般性の高い実用的指標であることが示された。


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