| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


シンポジウム S04-5 (Lecture in Symposium/Workshop)

光学リモートセンシングを用いた葉形質の推定

中路達郎(北大)

植物からの反射を分光観測する光学リモートセンシングは、葉の展開や落葉といった形態的なフェノロジー、あるいは窒素やクロロフィルといった葉の形質の評価に利用されている。従来の研究の多くは、特定の2~3波長における反射情報から推定された形質を個々に利用するが、近年、連続多波長の反射情報を観測・解析することで、複数の葉形質を同時に推定し、新たなニーズに応えようとする研究が注目されている。例えば、熱帯林の事例では、可視~短波長赤外波長の連続スペクトルが、窒素や水分、色素類をはじめセルロース、リグニン、フェノールといった有機化合物の同時推定に有効であることが示された。これらの形質は、養分状態や防御物質といった生態学的研究にも有用だが、熱帯林では樹種判別にも有効な情報となるため、生物多様性の把握などへの活用も注目されている(Asner & Martin 2010; Tollefson, 2011)。では、このような葉形質の推定が、立地の異なる東アジアの森林でも有効だろうか。その可能性を調査するために、今回、冷温帯~熱帯の森林で試料を採取し、形質の推定精度について検討した。およそ200樹種を対象に、成木の樹冠最上部で葉の反射スペクトルを計測し、7種の形質を分析した。その結果、0.4~2.5ミクロンの反射情報から作成したPartial Least Square回帰モデルの推定誤差(rRMSE)は、窒素やLMAで11%程度であり、その他の形質も25%未満であった。この誤差水準は熱帯林樹種における報告と同様のレベルであった。本講演では、形質の種類や植生帯による推定誤差の比較結果等を紹介し、形質のリモートセンシングにおける課題や展望について議論したい(なお、本研究の一部は環境研究総合推進費戦略的研究開発領域S-9および科研費基盤(A)20255014の支援を受けて実施した)。


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