| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
シンポジウム S04-7 (Lecture in Symposium/Workshop)
人間と野生動物との軋轢が各地で生じている。野生動物の適切な管理、保全に対し、動物の生息空間を評価する事が重要である。動物は移動するため、一定の範囲における様々な環境要因を検討することになる。つまり、野生動物の保全・管理にはリモートセンシング技術が欠かせない。本発表では、リモセン技術を利用した野生鳥獣問題について、獣害管理と自然再生という視点から研究事例を紹介する。ここから、野生鳥獣問題に対し、リモセン技術が有する役割について議論する。
獣害管理では、ニホンザル由来の農作物被害軽減を目的とした生息地管理について紹介する。新潟県新発田市に生息するニホンザル地域個体群を対象に、現在と過去の生息地利用を比べる事を目的とした。過去から現在まで、どのような土地被覆の変化がニホンザルの分布拡大を引き起こしたのかを考察する。現在の土地被覆情報は、2007年に撮影されたALOS/AVNIR-2を使用し、過去のそれは1978年に撮影されたLANDSAT/MSSを使用した。2時期の衛星画像から、過去から現在までの森林や土地利用の変化を抽出し、それとニホンザルの分布との関係を明らかにした。
自然再生では、新潟県の佐渡島で行われているトキの再導入プロジェクトについて紹介する。動物の再導入を計画する際、動物がどのような環境を好むかを評価し、優先して再生するエリアを抽出する事が重要となる。しかし、再導入候補地では、動物の情報が乏しい事が多い。そのため、他地域の情報を外挿する事で、候補地の評価を行う必要がある。このような場面でも、リモートセンシング技術は効果的である。本研究では、中国トキの営巣情報を用いて、佐渡における営巣適地を抽出することを目的とした。野生トキの営巣情報と中国陝西省を撮影したLANDSAT/ETM+を使用してトキの営巣場選択を評価した。その結果を佐渡島に外挿する事で、再導入候補地の抽出を試みた。