| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


シンポジウム S09-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

1.長野県佐久地方の伝統的農法“稲田養魚”

小関右介(長野水試佐久支場)

水田で稲とともに魚を育てる稲田養魚は、限られた土地でより多くの食料を生産する有効な手段であり、アジアを中心に世界の国々で行われている。日本でも、内陸県を中心に戦前まで、稲作と同時にコイを養成する稲田養鯉が盛んに行われていたが、戦後の農薬の普及と新たな養鯉方式(ため池方式および流水方式)の発展にともなって衰退した。江戸末期(1840年代)から100年以上にわたって鯉(佐久鯉)の一大産地であった長野県佐久地方でも、稲田養鯉は1960年代に終焉を迎えた。しかし、稲田で魚を育てる文化と技術は、1978年に始まった水田利用再編対策(米生産調整のための転作振興)の下で稲田フナ養殖へと受け継がれ、今日まで実践されてきた。最近、この佐久の稲田養魚に対して、食の安全・安心や農地の環境保全などの観点から関心が高まっており、稲作や水田生物群集に与える影響について実証的知見が集まり始めている。本発表では、そうした最近の知見を紹介し、稲田養魚という伝統的農法が水田地帯の生物多様性に与える影響について考察したい。


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