| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


シンポジウム S10-6 (Lecture in Symposium/Workshop)

標高万能植物ミヤマハタザオにおけるトライコームおよび光受容体遺伝子の集団間分化

平尾 章(筑波大・菅平セ)・恩田義彦(理研)・清水(稲継)理恵(チュー リヒ大)・ 瀬々 潤(東工大)・清水健太郎(チューリヒ大)・田中健太(筑波大・菅平セ)

シロイヌナズナ属野生植物であるミヤマハタザオ(Arabidopsis kamchatica subsp. kamchatica)は,極めて幅広い標高帯に生息する.これまでに,野外集団のデモグラフィーが標高に沿って変化していること,さまざまな形質が標高間で遺伝的に分化していることが明らかになってきた.本研究では標高適応の遺伝的背景を明らかにするために,開花および被植防衛に関連する8つの遺伝子(GI, HEN2, DFL2, GL1, MAM1, TTG1, CRY1, PHYB)を対象に適応遺伝子を探す候補遺伝子アプローチを試みた.

各遺伝子約400bpの配列を対象に,中部地域の標高30-3000mに分布する24野外集団に含まれる塩基多型を,各集団20個体のDNAを混合して第二世代シーケンサー454 GS Juniorを用いて塩基解読することで並列的に探索した.ミヤマハタザオは異なる2つの交雑親種に由来する異質倍数体であるため,交雑親種の違いに由来する相同遺伝子(ホメオログ)を判別するパイプライン(データ解析手順)を構築した.その結果,トライコーム(葉や茎の毛状突起)形成制御遺伝子GL1および光受容体遺伝子CRY1,PHYBにおいて,集団間で著しく対立遺伝子頻度が異なる塩基多型サイトを見出した.これらの対立遺伝子頻度は集団の標高と相関しており,標高適応を担っている遺伝子である可能性が高い.今後の展開として,体系的な相互移植実験を組み合わせた適応研究の新たな方向性についても議論したい.


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