| 要旨トップ | ESJ60 シンポジウム 一覧 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
シンポジウム S10 -- 3月7日 9:30-12:30 D会場
日本が世界的にも豊かな生物多様性を有する要因の一つが、標高方向の幅広さである。標高方向に移動すると、水平方向の約800倍の速さで気温が変化するため、短い空間距離の中で環境が激変する。このような標高傾度に沿って、シラカンバ-ダケカンバのように近縁種間の分布が置き換わっている例が多数ある。しかし、近年の遺伝解析手法の発達により、これまで同種とされてきた生物群内にも、標高傾度に沿った遺伝的多様性が隠れていることが分かってきた。例えば、標高によって異なる隠蔽種が棲み分けていることや、標高に沿って生態形質や遺伝子が適応的に分化していることが見つかってきた。このような標高傾度に沿った遺伝的多様性は、山国・日本における生物多様性成立機構の理解やその保全に重要であるとともに、環境傾度に沿った適応進化と生物の多様化を理解するという進化生物学的な挑戦の上でも格好のシステムを提供してくれる。このシンポジウムでは、中部山岳地域を抱える静岡県を会場にした本大会において、標高傾度に沿った中立および適応的な遺伝的多様性について植物と昆虫を材料に研究している演者に話題を提供していただき、その進化生物学・保全生物学上の意義について議論したい。
趣旨説明 市野隆雄(信大・理, 信大・山岳総研)
コメンテーター 矢原徹一(九大・理・生物)
[S10-1] 山岳アリの標高傾度にそった遺伝的多様性
[S10-2] 北方針葉樹トドマツの標高に沿った適応的形質とその遺伝変異
[S10-3] 標高傾度にそった水生昆虫類の流程分布と遺伝的特性
[S10-4] ヤマホタルブクロにおける花サイズの標高間変異と遺伝子流動
[S10-5] オサムシにおける高度勾配上の適応と種分化
[S10-6] 標高万能植物ミヤマハタザオにおけるトライコームおよび光受容体遺伝子の集団間分化
[S10-7] 標高による遺伝的分化の特性を考える