| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


シンポジウム S11-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

導入:絶滅回避は進化の第1法則!?

吉村仁(静岡大学)

従来の進化の総合学説では、自然選択プロセスによって適応度のより高い生物個体が勝ち残り、適応度の低い個体が競争に負け消えていくと考えている。個体群の存続(絶滅をしないこと)を前提して、どの戦略(形質・遺伝子型)が相対適応度が高いかを考えている。そのため、環境の変化・変動に対して生物個体群が絶滅するか存続できるかという、もう1つの自然選択の問題はほとんど扱われて来なかった。ところが、地質時代を通して恐竜や三葉虫など多くの生物種が絶滅してきたことは有名である。これらの絶滅は、本来不確定で予知できない環境の大きな劇変によって引き起こされたとするのが一般的である。そして数少ない生物がその環境変化の中を生き残り、絶滅を避ける形質を進化したと考えられる(吉村仁「強い者は生き残れない」(新潮選書2009)。環境の変化・変動に対する絶滅回避の適応進化は、もっとも重要な自然選択プロセスであり、進化の第1法則とみなせるはずである。そして、存続を仮定した従来のより高い適応度の進化は、第2法則とみなすことができる(吉村仁「なぜ男は女より多く産まれるのか‐絶滅回避の進化論」ちくまプリマー新書2012)。本シンポジウムの導入として、幾つかの例をあげて、これら2つの進化法則の違いを説明する。


日本生態学会