| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


シンポジウム S13-5 (Lecture in Symposium/Workshop)

南極湖沼における植物群落の空間分布パターン形成に関する数理モデル

池田幸太(明治大・先端数理)

南極のスカルブスネス露岩域における湖沼には多様な生態系が存在し、蘚類、藻類、藍藻類を含む複雑な植物群から構成された尖塔状の植物群落が形成されている。この植物群落は、直径40cm、高さ60cmにも達するコケ坊主と呼ばれるものや、茗荷筍のようなものを含む。この植物群落が存在する地帯を俯瞰すると、ある深さの範囲において、群落は深さとともに大きくなり、一定範囲内に含まれる群落数が変化する様子が観察される。植物群落単体の大きさが変化する原因は特定されていないものの、構成種である蘚類、藻類、藍藻類が強光環境下で示す特性の違いによるものであると考えられている。実際、対象としている湖沼における藻類や藍藻類は強光による生長阻害を示す一方、蘚類からはそのような生長阻害は起こりにくいことが先行研究によって明らかにされている。一方、大きさや個体数密度の変化が、植物群落の空間的配置にどのような影響をもたらすのかについては研究が行われていない。植物群落は尖塔状の形をしているため、側面部では単位面積辺りの放射照度が低くなるため、藻類や藍藻類にとって有利な環境に働く。さらに、藻類や藍藻類から蘚類に栄養分が提供されている可能性が指摘されている。これらの事実を総合的に考えると、植物群落内における共生関係が存在すると理解できるため、群落の個体数密度が大きいほど、この共生関係を有効利用していると考えられる。つまり、空間配置を調べることで、植物群落全体としてその環境にどのように適応したのかを示す指標を得ることができるであろう。そこで本研究では、植物群落の空間的な配置、湖沼の深さ、環境要因がどのような関係にあるのか、 数理モデルを用いて明らかにする。


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