| 要旨トップ | ESJ60 シンポジウム 一覧 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


シンポジウム S13 -- 3月7日 9:30-12:30 G会場

小宇宙としての南極湖沼生態系:極限環境からつなげる現象と理論

企画者: 田邊優貴子(東大・新領域), 水野晃子(国際水研)

南極大陸の縁辺には氷に覆われていない露岩域が点在する。その面積は大陸の2-3%であり、生物の限られた棲息地となっている。昭和基地周辺だけでも100以上もの湖沼が存在し、液体の水を一年中たたえている。最終氷期の終わりとともに数万年前に氷床から解放され、何もなかった裸地に氷河や雪の融水がたまり、生物が侵入・定着し南極湖沼生態系は発達してきた。低温・貧栄養環境ながら、現在ではシアノバクテリア・藻類・コケ優占の群集が湖底一面に繁茂しており、独特な構造物が形成されている。近接した湖沼群は、ほぼ同じ時代に誕生し、ほぼ同じ気候条件下で発達してきた系だが、湖底生物群集は湖ごとに多様な形態・構造となっている。

 南極湖沼生態系という、ほぼ閉鎖系、かつ、シンプルな極限環境だからこそ、フィールド、理論、実証を繋ぐことができないだろうか。これまで2回、「藻類の群集構造と進化動態:理論と実証」というテーマで企画集会を開催し、3年間にわたり研究を進めてきた。本シンポジウムでは、南極湖沼で捉えた現象としての光環境と、それに対する生物の応答、特に群集構造や生産性の変化から、群集の進化的応答、群集構造の決定要因、空間パターン形成のメカニズムについて理論モデルを構築し、その結果からフィールドで捉えた現象を読み解くことを試みる。この試みの紹介をきっかけとして、極限環境からの生態学への新たな可能性と展開について討論していきたい。

[S13-1] 南極湖沼をモデルとした現象・理論・実証の統合を目指して 田邊優貴子(東大・新領域)

[S13-2] 南極湖沼というフィールド 〜水中の光環境と湖底植物群集の光吸収特性〜 工藤 栄(極地研)

[S13-3] 光資源を巡る競争と植物群集のビルドアップ:南極湖底藻類マット構造と光吸収・防御スペクトルの進化 佐々木 顕(総研大・先導)

[S13-4] 藻類色素の光吸収スペクトルを用いた数理モデルによる南極湖底藻類マットの群集形成及び呈色構造の解明 水野晃子(国際水研)

[S13-5] 南極湖沼における植物群落の空間分布パターン形成に関する数理モデル 池田幸太(明治大・先端数理)

[S13-6] 移動境界問題としての藻類マットモデル:パターン形成と光を巡る競争 吉山浩平(岐阜大・流域圏)

[S13-7] 室内実験から読み解く南極湖底藻類の光合成と色素合成誘導の光波長依存性 田邊優貴子(東大・新領域)


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