| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 |
日本生態学会60周年記念シンポジウム 1
長期生態研究は、1)進行の遅い現象、2)希でエピソディックな現象、3)変動の大きな現象、4)複雑な相互作用をもつ現象などで特に重要といわれているが、近年は地球環境問題の観測としても、重要な意味をもつ。現在では国際的ネットワークもあり、日本にも優れた長期生態研究サイトが整備されてきたが、ここに至るには1970年代後半からのやや長い道のりがあった。1964年から1974年の10年間続いたIGBP(国際生物学計画)は、日本でもとくに生態系の生産力の推定などで大きな成果をあげた。また、この研究のためにいくつかの研究サイトが整備されたが、残念なことにこれらの研究サイトの多くはIBPで築き上げた研究体制を維持できなかった。一方、米国では1980年にUS LTER(長期生態研究ネットワーク)が結成され、IBPで基礎ができた生態研究をさらに発展させる方向性を明確に打ち出した。さらに、米国内での体制を整えた後、地球規模での問題解決の重要性から、1993年に米国以外の国にネットワークを広げ、ILTERへと発展させた。日本にもUS LTER やILTERからの参加の打診があり、アジア地域のネットワークづくりにも貢献したが、国内体制の整備は遅れ、日本のLTER組織が正式に発足したのは2006年、ILTERに加盟したのは2007年になってからであった。現在はILTERでも積極的な役割を担っている。ただ、米国ではNEON(米国生態観測ネットワーク)がさらに大規模な形で2012年から動き始めており、こうした先進的な研究に対して日本がどのような独自性を打ち出してゆくのかが大きな問題となっている。