| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
企画集会 T02-4 (Lecture in Symposium/Workshop)
近年の人間活動の増大は、地球上の多くの湖沼の富栄養化や集水域の土地利用の変化、そしてより広域に及ぶ大気汚染を招いている。これら環境変化の多くは湖沼の堆積物に記録されており、その解読は生態系の保全の具体的目標の設定のために重要である。
本研究では、人為影響の程度やその種類(生活排水や大気降下物など)が異なると考えられる北海道東部と南部、本州中部の山岳湖沼(それぞれ羅臼、ニセコ大沼、ミクリガ池)及び平地湖沼(それぞれ阿寒湖、渡島大沼、木崎湖)を対象とした。それぞれの湖沼の過去100年分の堆積物について、植物プランクトン生産速度や窒素負荷の指標として炭素窒素同位体比を、集水域からの陸上有機物供給やその植生の指標としてリグニン由来フェノールを測定した。さらに、集水域や広域からの鉱物の流入や人為起源の重金属負荷の変化を捉えるため、微量元素分析及びストロンチウムと鉛の同位体分析を行った。
これらの分析の結果、平地湖沼では富栄養化を示す炭素窒素同位体比の変化、山岳湖沼では窒素降下物由来と考えられる窒素同位体比の減少が見られた。また、各湖沼のリグニンフェノールの組成に顕著な経年変化は見られなかったが、湖沼間では集水域の植生を反映した違いが見られた。山岳湖沼では鉛などの微量元素濃度の増加や、排出規制を反映したと考えられる減少が見られた。一方、山岳湖沼においても、高い鉛濃度が見られるなど人間活動の影響が現れていた。さらに、いくつかの湖沼において、ストロンチウム同位体比から湖沼に供給される鉱物の供給源が変化したこと、鉛同位体比から鉛の供給源に大きな変化があったことが明らかとなった。今回の発表では、これらの環境変化が生じた時期やその地理的な違いの要因について考察を行う。