| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
企画集会 T06-2 (Lecture in Symposium/Workshop)
近年、放置され荒廃する針葉樹人工林が増加しており、生物多様性や生態系機能の回復を目的として、人工林に広葉樹を導入し針広混交林化することが注目されている。その1つの方法は間伐であるが、その効果の解析には長期モニタリングが必要である。本研究では、間伐後9年目の調査結果を報告する。
試験地は1983年植栽のスギ人工林である。2003年(20年生)と2008年(25年生)に無間伐、33%間伐(弱度間伐)、67%間伐(強度間伐)の3段階で間伐を行った。(1)樹高1.5m以上の高木・亜高木・低木(株立ち矮性を除く)の広葉樹の種数、個体数は強度、弱度、無間伐の順に高い傾向にあった。しかし、多様度指数(Shannon指数)は強度間伐区においてミズキが優占したため3つの処理区間で有意差は見られなかった。(2)林分材積成長量はスギだけで見ると無間伐、弱度、強度の順に高かった。逆に広葉樹だけで見ると強度、弱度、無間伐の順に高かったが、スギと広葉樹を合わせてもスギだけのときと同じ傾向になった。これらのことから、間伐強度を強くすると針広混交林となる可能性は高まるが、林分材積成長量は減少し、樹木の炭素固定量は減少するというデメリットが考えられた。(3)木材生産の観点から広葉樹と針葉樹両者の収量-密度図(Y-N曲線)を作成し、針葉樹だけでなく林分全体としての収穫予測方法を検討した。