| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
企画集会 T06-3 (Lecture in Symposium/Workshop)
東北大フィールドセンターのスギ人工林試験地において、広葉樹の混交の程度が土中への水の浸透速度にどう影響するのを解析した。立木の3分の2を間伐し広葉樹が多数侵入した強度間伐区、3分の1を間伐し下層にだけ草本や広葉樹が侵入した弱度間伐区、対照区の無間伐において、真下式土壌透水性試験器を用いてA層表層(0-5cm)の土壌を採取して測定した。浸透速度は無間伐区で最低であった。弱度間伐区では無間伐区の約1.2倍であったが、強度間伐区では約2倍になった。無間伐の混み合った人工林では林床に植生がほとんどないため、雨滴が直接土壌を叩くことによって土壌が細かく粉砕され、土壌表層に土膜(クラスト)が形成されるため土壌への水浸透が悪くなることはよく知られている。しかしこの試験地では両間伐区とも地表面の植生被度はほぼ100%であり物理的な被覆効果の違いではないと考えられた。むしろ、強度間伐によって侵入した草本や広葉樹が地下部に隙き間なく根を張り、また、落葉を大量に供給することによって、土壌動物を増やし、土壌中の空隙を増やしていったためだと推測された。例えば、草本の種多様性が高いと土壌中の細根密度が高くなり、細根密度が高いと土の容積密度が減り、その結果、水浸透速度が大きくなった。また、広葉樹の種数が多いと林床の落葉の種数や現存量も多くなり、土壌の空隙を増やし水浸透能を高めた。多分、広葉樹の落葉量や種数が多いとミミズなどの土壌動物の量が増え、結果的に土壌の容積密度を減少させたためだろう。これは針広混交林化、すなわち種多様性の回復が水源涵養機能の発達を促していることを強く示唆している。このような森林では大雨が降っても 水は地表面を流れないで土中に浸透し、水は土壌中をゆっくりと下降し時間をおいて河川に流れ出すため洪水を防ぐ効果も大きいと考えられる。