| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


企画集会 T06-7 (Lecture in Symposium/Workshop)

スギ人工林における林床植生と土壌保全機能

*上野満 (山形県森林研究研修セ)

森林に対する社会的要望が、木材生産から公益的機能の発揮へ大きくシフトする中、維持管理が行き届かないスギ人工林に広葉樹を侵入させることで、公益的機能の高い森林へと誘導する気運が高まっている。しかし、スギ林に広葉樹が侵入することにより、また、広葉樹の侵入を目的とした森林管理において、いかに公益的機能が変化するかを示した研究例は少なく、森林管理と公益的機能の関係示すデータを蓄積する必要がある。

林内のある地点において土壌浸食の発生を抑制し、土壌が安定している状態を維持することは、森林の公益的機能を維持するための要である。本研究では、スギ林への広葉樹の侵入による公益的機能の変化を評価する目的で、林相の違いと植生被覆が土砂の移動量に与える影響について調査した。

スギ林における間伐は、林床植生の植被率を高め、林床における植生構造を多様化させることに貢献した。一方、土砂受け箱により表土の移動量を測定した結果、間伐林分における土砂の移動量は減少傾し、さらに、時間の経過にともない低木の木本類が発達することで、土砂の移動量はさらに減少する傾向が見られた。また、広葉樹林における表土移動量は、林床植生の被覆度に影響し、必ずしもスギ林に比べ全体量が少ないとはいえない。土砂の移動量は、林床植生や低木類の植被率が大きく関与しており、森林の表土攪乱の抑制は、広葉樹林・スギ林に関わらず、植生による林床被覆が重要である。


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