| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


企画集会 T08-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

サンゴ群集の時空間動態モデリング:植物群集との対比

*熊谷直喜(琉大・熱生研), 向草世香(JSTさきがけ,長大・水産,琉大・熱生研)

造礁サンゴ類は生態系基盤を構成し、撹乱や生物間相互作用による群集動態が見られるため、その群集動態メカニズムもまた陸上植物のアナロジーとして捉えることができる。一方、サンゴ群集は台風や夏場の高水温などにより高頻度の大規模撹乱を受けやすい。そのため、サンゴ群集の時空間動態プロセスを理解するには、撹乱履歴と生物間相互作用の影響を同時に評価することが望ましい。そこで本研究は、撹乱履歴の異なる 4 定点方形区(各 5 × 5 m)におけるサンゴ群集の 4 年間の調査結果に基づき、生物間相互作用がサンゴ群集の時空間動態プロセスに与える影響を推定した。相互作用は同所的空間(一辺 12.5 cmの格子内)からの影響と、周辺空間(周囲の格子)からの影響とを分離し、種群内・種群間で空間範囲のモデルを比較した。さらにDynamic occupancy model を用いた階層ベイズ法により生残率・増加率の変動を推定した。

影響の空間範囲の最適モデルは同種群内と他種群とで異なっていた。周辺空間からの生残率・増加率への影響は全般に同種群内で大きく、いずれも正の効果だった。成長の速いミドリイシ類や藻類では周辺空間の影響を含むモデルが適合し、藻類は撹乱により生じた空き地における生残率・増加率の上昇が顕著だった。一方、ミドリイシ類はいったん撹乱を受けると生残率・増加率は大きく減少したため、占有率の回復にはより長い時間が掛かる見込みである。しかしミドリイシ類はサンゴ群集の主要な構成種群にも関わらず、他の造礁サンゴ類よりも周辺空間への増加率が高かった。すなわち、サンゴ群集の動態は極相の森林群集よりも、むしろ遷移初期の森林群集や草本群集に類似していると考えられる。講演では両者の特徴を対比させることで、陸海の固着性生物の時空間動態メカニズムについて議論する。


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