| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


企画集会 T10-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

世界市民会議World Wide Viewsの実践からみる市民参加のあり方と対話の場の可能性

*黒川紘美(日本科学未来館), 池辺靖(日本科学未来館), 寺村たから(日本科学未来館), 佐尾賢太郎(日本科学未来館)

物流や社会システムなどが国家の枠を超えて不可分となっている現代において、生物多様性の消失は地球規模で対処していくべき課題である。2010年、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で採択された愛知目標では2020年までに達成すべき目標が設定されているが、経済的・文化的な相違がある中、実現は容易ではない。また、COPにおいて議論の主体となるのは政策担当者や研究者、NPOなどであるが、決定された政策の影響を受け行動する必要があるのは各国市民一人ひとりである。

世界市民会議World Wide Views(WWViews)は、地球規模課題に対する世界市民の意見をCOPの場に届けようという試みである。デンマーク技術委員会の呼びかけで始まったもので、2012年9月15日、生物多様性をテーマに日本を含む25の国と地域の人々が参加して実施された。WWViewsの特徴は、専門家ではない“ふつうの”市民が各国で100人ずつ集い、世界共通の資料と設問をもとに世界共通の手法で議論するということである。参加者は年齢、性別、職業などが概ねその国の縮図となるように集められた所謂「ミニ・パブリクス」であり、人々の意見は投票という形で全世界から集約された。生物多様性条約事務局や日本政府環境省からは、会議結果とその意義について一定の評価を得たほか、議論中の会話やアンケートの分析結果から、参加者自身にも変化が生まれたことがわかってきた。一方で、参加者に提供する情報や提言文書にある種の偏りがみられるなど、問題点も多い。

本発表では、WWViewsの実施を例に地球規模課題に対する市民参加のあり方やコミュニケーション手法、議論の前提となるべき知識の内容と提供方法、必要なフレームなどについて議論したい。


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