| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
企画集会 T10-2 (Lecture in Symposium/Workshop)
生物多様性に関わる課題が議論される機会が増えている。それぞれの地域でよりよい解決方法を模索するには、科学者をはじめ、様々な分野の専門家が市民と共に議論を重ねることが必要である。しかし、多様なバックグラウンドを持つ人々の間で、「生物多様性」という概念を共有することは非常に難しい。それは「生物多様性」が抽象的な概念で、目で見たり、手で触れたりすることができないものであるということも1つの要因となっているのではないだろうか。「生物多様性」の概念を具体的なイメージとして共有することは、多様な人々と問題意識を共有し、建設的に議論を進めるために必要な過程であると考える。筆者は、「生物多様性」の理解を助ける、と同時に、互いの視点を尊重できるような対話力の育成に資する教材「宇宙箱舟ワークショップ」の開発に携わった。「もしも今、地球外惑星に移住しなければならないとしたら、誰を連れていきますか?」という極端な問いを参加者みなで議論しながら、生物多様性の概念を学ぶことを目指した教材である。宇宙という日常生活とは違った状況設定にすることで、普段の生活の中では見えにくい社会的な問題にも触れる事ができる。主には、小・中・高等学校の学校教員や博物館などで教育プログラムを実施している担当者に教材が活用されることを目指して開発された。生物間のつながりや人間の価値観は絶対的なものではなく、環境によって変わり得るものである、ということをこの教材を使用したワークショップの参加者に気づいてもらえるような設計になっている。2010年秋より、京都大学の教職員と小中高等学校の教諭などが協力して、開発を続けており、これまでに、博物館での子ども向けイベントや大学教職員による出前授業といった機会を利用して、複数の実践を行なってきた。今回の発表では、教材の開発過程を紹介し、その実践例を報告する。