| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


企画集会 T11-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

水田の大型動物に対する津波の影響評価-宮城沿岸部の水田を例に-

*向井康夫 (東北大・生命), 鈴木朋代 (東北大・理), 岩渕 翼, 牧野 渡, 占部城太郎 (東北大・生命)

かつて水田は、後背湿地や扇状地などの自然湿地を改変することにより造成されてきた。水田は食物生産の場であるだけでなく、季節的に安定した変動をする広大な二次的湿地でもあり、自然湿地にもともと生息していた生物の、重要な代替生息地として機能してきたと考えられている。

東日本大震災に伴う津波により、東北地方の沿岸域の水田は海水の流入、ヘドロの堆積、瓦礫の流入、地盤の沈下など様々な程度の被害を受けた。宮城県の被災水田面積は、県内の総水田面積の約11.5%にのぼるとされている。しかし、干潟などの自然生態系と異なり、被災水田の一部はすでに耕作可能な状態まで人為的に復旧されている。本研究では、人為的管理が強く行われている水田生態系に生息する大型水生動物相に対する津波の影響評価を目的とし、宮城県沿岸域の被災地域の水田で調査を行った。

調査は2012年5月下旬から7月上旬の、水田の田植えから中干しまでの期間に6つ地域で、Suzuki & Sasaki (2010)に準拠した市民参加型の調査手法を用い、1mmメッシュの網で採集可能な大型水生動物を対象として行った。各地域では、被災後2012年までに復旧され耕作が行われた水田3筆と、その水田の近隣にある被災しなかった水田3筆の水生動物相を調査し、比較することで津波の影響評価を試みた。

結果、調査を通じて約110分類群の大型水生動物が確認され、種組成は地域により異なっていた。地域別に見ると、総分類群数には被災水田と対照水田で一貫した傾向は認められなかったが、生活史を通じて水生生活を送る分類群は被災水田で少ない傾向にあった。これらの結果より、水田の水生動物への津波の影響は、動物の生活様式により異なることが示唆された。


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