| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨 ESJ60 Abstract |
企画集会 T11-3 (Lecture in Symposium/Workshop)
東日本大震災によって引き起こされた津波や地盤沈下によって,沿岸域では甚大な被害を受け,海岸部の砂丘植生や防潮林にも多大な影響を与えた。海岸砂丘に生育する種にとってはハビタットの消失や変質に繋がっていると考えられる。そこで本報告では,岩手県の海岸砂丘を取り上げ,ハビタットの消失つまり景観レベルでの変化について整理し,その要因について考察した。
岩手県の津波前後の空中写真および現地調査から,津波による海岸砂丘の面積や幅の増減について確認した。この砂丘面積・幅の増減を,津波の遡上高・沈降という震災に関する要因,河川の有無・湾の内外など砂浜の位置に関する要因,防潮堤などの人工物の有無などの人工的な要因などとの関係について整理した。
砂丘面積・幅は,岩手県南部ほど大きく減少する傾向があった。大船渡市吉浜などでは,海岸砂丘および背後の防潮林が消失し,防潮林や耕作地であった砂丘の後背地に砂浜が見られるようになった。釜石市根浜海岸では,鵜住居川河口に発達していた砂嘴が消失し,砂嘴から連続する砂丘の幅も減少した。これらの場所では沈降が約60cm,津波の遡上高は15~19mであった。
一方,岩手県北部では,海岸砂丘が大きく減少したところは少ない。田野畑村明戸などは防潮林が津波により,ほとんど倒されたり,流失したりしたものの,海岸砂丘の幅は大きく変化していなかった。これらの場所では沈降が10~20cm,津波の遡上高が20m以上と大きい地域であった。岩手県北部で砂丘が減少したのは普代村普代,岩泉村小本浜などであった。これらの場所は津波の遡上高が20m前後と大きく,海岸砂丘の減少に津波の影響が少なからずあることが窺えた。
これらのことから岩手県の海岸砂丘の減少は,沈降による影響が大きく,次いで津波の大きさが影響していることが窺えた。