| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


企画集会 T13-3 (Lecture in Symposium/Workshop)

移動分散の進化モデルで明らかにされたことと、これから明らかにすべきこと

入谷亮介(九大・院・数理生物)

「生き物は、どうして移動するのだろうか?」これに究極回答を与えるのが、「移動分散の進化論」である。移動分散(Dispersal)とは、あらゆる生物に普遍的に見られる形質の1つである。Dispersalは集団間の遺伝子流動を引き起こし、集団の構造を改変する、生態学において重要な現象の1つである。

Dispersalという言葉を耳にして、いったいどのような「移動」を、おのおの想像されるであろうか。その違いが多くの混乱を引き起こしているのが現状である。たとえばDispersalは、渡り鳥やオオカバマダラに見られるようなMigration(移動)との区別がきちんとされていない。これらの定義は、進化生態学の文脈においては、どのように適切に区別されるべきなのであろうか?本講演においては、この点をまず解説する(ただし、講演者の解釈を説くまでであり、必ずしも一般的な定義回答を与えられるとは限らない)。

また、Dispersalの研究は、実証・理論ともに蓄積が多く、Dispersalの進化や生態学的意義に関しては、すでに様々な知見が得られている分野である。いったい、なにが判っていて、今後どういったことを明らかにすべきなのであろうか? このことを、理論的観点から、いくつかの数理モデル(飛び石モデル、島モデル、分散カーネルの進化モデル)の解説や分析を通じて、議論する。

最後に今後の展望として、これまでの実証研究における移動・移動分散へのアプローチ、理論研究における仮定などに関する分析的批判を行なうと同時に、本企画集会において提供された知見の総括・議論を行なう。


日本生態学会