| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


企画集会 T15-3 (Lecture in Symposium/Workshop)

愛媛県におけるスクミリンゴカイの総合的駆除の取組み

村上裕(愛媛県中予地方局産業振興課)・日鷹一雅(愛媛大・農)

スクミリンゴガイPomacea canaliculata (Lamarck)は,水稲稚苗を食害する南米原産の外来生物である.愛媛県においては,1986年7月に松山市,宇和島市の一部において野生化した本種が確認された.現在,県下19市町中11市町で確認されており,平野部水稲地域を中心に広範囲に分布している.本発表では,愛媛県における近年のスクミリンゴガイ駆除への取組み状況と,演者らが実施している総合駆除に向けた現地試験(予備試験)について報告する.メタアルデヒド剤の薬剤効果試験を現地圃場で実施したところ,48時間後の調査では97.0%であり,発生初期段階の防除効果は高い.しかし,無処理区と比較して卵塊数の減少が認められなかったことから,1回散布では本薬剤に次年度以降の発生量を低下させる効果はない.2回散布が有効と考えられるが,水稲の栽培型如何で本剤の使用基準である収穫90日前をクリアすることは困難な場合がある.マーキング個体放逐による本剤の誘引効果では,7日間の誘引貝数63個体,うち,マークされた貝は48個体で誘引率は9.6%であった.日毎の誘引数に一定の傾向は認められなかったが,放逐地点から最も近い地点に誘引される傾向が認められた.また,散布10日後以降においても誘殺が認められることから,スポット散布の残効性については今後検討していく必要がある.本種の総合防除として,スクミノン2回散布が可能な水稲栽培型の戦略的な取組みの推進,河川を逆流して分布拡大していることから、水際で阻止する発生予察体制の確立が挙げられるが,優先すべき防除対策としては,飛び地的に発生が確認された地域における侵入初期段階での徹底駆除による拡散防止である.


日本生態学会