| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


企画集会 T17-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

自動撮影カメラによる哺乳類多様性広域評価手法の開発

鮫島弘光(京大東南研)

中大型哺乳類は熱帯林の生物多様性の豊さの象徴であり、その保護は社会的な支持を集めやすい。このため持続的森林管理、REDD+、生物多様性オフセットなどの熱帯林保全プロジェクトにおいて、中大型哺乳類の多様性調査を実施してプロジェクトの保全効果を可視化することは、プロジェクトへのさらなる投資を促進し、ひいては愛知ターゲットの達成に寄与すると考えられる。また多様性の状況を把握できれば、プロジェクトの管理システムにフィードバックされることによって、その保全効果の改善に寄与しうる。しかし森林管理スケールでの哺乳類の広域調査方法としては従来、巣のカウントによるオランウータンの調査、地形が比較的平坦かつ動物の生息密度が高い場所で可能なライントランセクト法が行われているのみであり、ほとんどの動物種は対象にできなかった。

そこで我々は自動撮影カメラを用いた哺乳類の広域調査手法を開発し、ボルネオの4か所の択伐コンセッション(800-1500km2)、スマトラのアカシアプランテーションを対象にフィージビリティスタディを行ってきた。これらの結果、十分なデータを得るために必要なカメラの台数、プロットの適切な配置の仕方、必要努力量などが明らかになってきた。また得られたデータの解析から、各コンセッションの動物相の特徴、伐採によるインパクトの違い、小面積で残された保護区の効果などが明らかになり、森林管理に対する具体的な提言も可能になった。さらに生息地モデルを応用した管理シナリオごとの将来予測、保護区の設置に伴う機会費用の損失も考慮した最適な保護区選定プロシージャの構築も行った。本手法が東南アジア熱帯林の管理の中で広く適用されれば、熱帯雨林における生物多様性の保護がより効果的・効率的に実現されると考えられる。


日本生態学会